読書感想:非線形科学

非線形科学 (集英社新書 408G)
蔵本 由紀
集英社
2007-09-14



「生きた自然に格別の関心を寄せる数理的な科学」(著者の定義-P18)の入門書。とはいえ内容はかなり難しいが、それでも何とかして内容を理解できるようになりたいと知的好奇心を刺激される1冊です。雲や海岸線はなぜあのような形なのかといった素朴な疑問に法則を見出そうとしています。1/fのゆらぎ、カオス、フラクタル、ネットワーク理論、パターン形成、同期といったキーワードが次々に登場します。また著書の中では分散、標準偏差、正規分布といった統計用語に関して面白い記述がありました。以下抜粋です。


身の回りのさまざまな物を「不規則にゆらいでいる形や動き」としてとらえられる・・(中略)・・たしかに不規則な事象に出会ったとき、「平均値プラスゆらぎ」としてそれを理解しようとする態度は十分に理由があり・・(中略)・・そのゆらぎの強さを「分散」という量で表すことができます。・・・(中略)・・・分散の平方根である「標準偏差」は、ゆらぎの振幅の代表的な大きさを表しています。・・・(中略)・・・多数の独立したランダム事象からなる集団の振る舞いは、事象の数が多ければ多いほど安定し、集団全体としての相対的ゆらぎはますます小さくなる・・
と「正規分布」や「中心極限定理」の解説へと進んでいるのですが、統計学では「ゆらぎ」ではなく「ばらつき」という単語を使うのが一般的です。それを「自然のゆらぎ」で説明しているのが特に印象的でした。全般に数式が少ないので何とか最後まで読めたのかもしれません。新書でこれだけの内容はかなりお得な1冊です。